背景
広島市シェアサイクル ぴーすくるは広島市内で利用できるレンタサイクルです。ぴーすくるの無人のサイクルポートは広島市内に100個所程度設置されており、これらの場所から手続きを行うと1時間165円で自転車を借りることができます。ぴーすくるは買い物、通勤、観光など幅広い目的の交通手段として利用されています。
レンタサイクルの特徴の一つとして、借りた場所と同じ場所に返却しなくてよいというものがあります。100個所のサイクルポートのどこに返却しても問題ないので、片道だけ利用したり、途中で乗り捨てたり、と自転車の面倒を最後まで見なくて良いメリットがあります。
また、以下のようなトラブルや急な予定変更のときに、近くのサイクルポートに乗り捨てれるというメリットもあります。
- 雨が降り出したので、電車に乗り換えたい、または、近くの店で雨宿りしたい
- ぴーすくるが故障したので、徒歩に切り替えたい
- 目的地が変わりぴーすくるでは行けない範囲になったので、タクシーを捕まえて移動したい
- 良さそうなお店を見つけたので、ここで乗り捨てていきたい
一方で、ぴーすくる(レンタサイクル)の弱点として、トラブルや急な予定変更のときに、最寄りのサイクルポートが見つけられないという問題が発生します。
ぴーすくるの利用者は基本的に借りるサイクルポートと返すサイクルポートの場所は下調べしている(はず)のですが、他のサイクルポートの位置をすべて把握しているわけではないので、トラブルが発生したり予定変更の際に、最寄りのサイクルポートとそこまでの行き方を調べる必要が発生します。
せっかく、十分なサイクルポートがあり、乗り捨てという潜在的なメリットを持っていながら、利用者が素早く最寄りのサイクルポートが発見できないがために魅力が半減していると思います。
(※ぴーすくるはGPSを搭載しており(おそらく)サイクルポート付近以外での乗り捨ては「返却操作」ができず、利用料金が追加でかかってしまったり、運営者様に迷惑がかかってしまいます)
そこで、ぴーすくる利用者が簡単操作でもよりのサイクルポートまでの行き方をしらべられるようなプロダクトを考えました。
要件
- ぴーすくるの利用者がボタンを押すと、現在地から一番近いサイクルポートまでの地図と道順が表示されること
- 現在の場所で雨が降りそうなら利用者にLEDでお知らせして、現在地から一番近いサイクルポートまでの地図と道順が表示されること
システム構成図
使用した部品
製品名 | 用途 |
---|---|
Raspberry Pi 3 Model B+ | ターゲットデバイス |
docomo L-02C | 通信のため |
SORACOM Air SIMカード plan-D | 通信のため |
GPS受信キット AE-GYSFDMAXB | 現在地の取得 |
Kuman 3.5 HDMI Display-B | 現在地から一番近いサイクルポートまでの経路表示 |
タクトスイッチ | 利用者が一番近いサイクルポートを知りたいときに押す |
青色LED | 現在位置で悪い天気が観測されたら利用者にお知らせする |
結線図
結線図は以下のようになります。
実際に部品を結線した様子は以下のようになります。
見栄えが悪いので、UI部分を残して箱に入れました。
UI部分は以下のようになります。
動作概要
- 利用者きっかけの経路表示
- タクトスイッチを押下する
- GPS受信機より受信した現在の緯度、経度を確認する
- あらかじめ、保持している100箇所のサイクルポートリストと現在の緯度経度を比較し、最も近いサイクルポートの緯度経度を求める
- Google Mapに上記2点間の経路を要求し、ディスプレイに結果を表示する
- 現在地の天候きっかけの経路表示
- GPS受信機より受信した現在の緯度、経度を引数としOpen Weather Mapに天気を確認する
- 天気が悪かった場合(雨~雷)以下の内容を実施
- 青色LEDの点灯
- 「利用者きっかけの経路表示」同様の手順で、ディスプレイに経路表示
実証実験
使用感を確認するために
- 広島県の西広島駅から中区本通経由で宇品に移動する
- 本通通過中に友人からLINEが入り合流して店に行く提案を受ける
- 徒歩に切り替えるために、本プロダクトを使用し最寄りのサイクルポートを素早く探しだして自転車を止める
というストーリーを試してみます。
スタート地点・乗り捨て希望地点(友人から連絡が入った地点)・目的地は以下のようになります。
まずは、西広島駅のサイクルポートで自分のお好みの自転車を選びます。
選択した自転車に今回のプロダクトを装着します。(プロトタイプなのでむき出しでの装着となります)
こちらが装着前で
こちらが装着後です。(プロトタイプなので、むき出しです)
ディスプレイを小さな物を選択したので、それほど大げさにならずにつけることができました。早速、目的地に向けて走りだします。ぴーすくるは電動機がついているのでグイグイ進みます。
広島国際会議場近くまで到着したときに、友人からメッセージが入ります。
ここで、ぴーすくるを乗り捨て、徒歩に切り替えるために、「本プロダクト」登場です。近くのサイクルポートへの経路を表示するためにタクトスイッチを押します。
すると
ちゃんと表示されました。広島国際会議場の前にサイクルポートがあり、自転車を押して行っても2分程度て付くようです。地図に従っていくと、ありました!サイクルポート!本プロダクトのおかげで素早くアクセスできました。
本プロダクトの実用性を確認できました。
実装手順
- raspberry pi3 B+セットアップ
- 各ハードウェアの結線
- RaspberryPiでL-02Cを使ってSORACOM Airに接続する
- Raspberry Pi3のPythonでGPSを扱う
- 後述するリポジトリをダウンロードをして実行
実行手順
- sudo wvdial
- chromium-browser –kiosk
- python3 main.py
ソース
本プロトタイプで使用したプログラムは以下に置いてあります。